活動報告
<卓話> チャレンジで繋がる人と人との絆
<卓話> チャレンジで繋がる人と人との絆
葉山トライアスロン協会 会長 彦井 浩孝 様
本日は「チャレンジで繋がる人と人との絆」をテーマに、しっかり汗をかくトライアスロン競技自体のお話も勿論でありますが、トライアスロンを通じて我々がおこなっている活動についてお話を進めさせていただければと思いますのでよろしくお願い致します。
我々のNPO法人は昨年の12月に立ち上げたばかりで「チャレンジアスリートファンデーション」と言います。これは必ずしもスポーツをバリバリやっている人達を指すのではなく、何事にも前向きにチャレンジ、活動し取組んでいく方を「チャレンジアスリート」とし、その方々をサポートするようなスポーツイベント等を通じて活動を行っていきたい、このような主旨で立ち上げた団体です。
昨年の3月11日皆さんの記憶から去ることのない東日本大震災が起こりました。実はその3月に我々は隣の葉山町にてランニングの大会を企画しておりました。全国で様々なイベント等が中止される状況で、開催すべきかどうか迷い、私も被災地での一夜を明かしながら考える中、葛藤もありましたが最終的に開催いたしました。「葉山トレイル」トレイルとは山の中を走るランニング大会ですが、事前に申込された方の半分以上がキャンセルとなりました。しかし再募集をかけたところ「走ることで何か復興支援に繋げることはできないだろうか、もしできるのであれば是非参加したい」という人が多く集まりまして、開催にこぎつけたわけであります。当日は被災地への復興支援の名のもと百十数名の方々に集まっていただき、チャリティーという形での開催となりました。そのような活動を我々は行っております。今年も3月に開催を予定しております。
昨年の開催では福島県のいわき市から避難してきていた高校生も参加していただきました。我々は参加してくれた彼らに敬意を表しつつ、勇気を振り絞ってこの大会に参加してくれたことで逆に勇気をもらったようなそんな活動となりました。昨年はこのランニング大会と9月に葉山町の一色海岸にてトライアスロンの大会を行いました。水泳3.8キロ、自転車180キロ、マラソン42キロというようなイベントは残念ながらできませんでしたが、逆に小学生でも参加できるようなミニミニトライアスロンということで、一色海岸にて自転車の代わりにサーフボートを手で漕ぐような種目を入れ、合わせ3種目でトライアスロンという形で開催いたしました。この大会は一昨年も行いましたが、昨年は震災のこともあり何事にもチャレンジすると前向きの方が非常に多く来られたように思いました。チャレンジとは何もスポーツをすることだけに限られることではなく、皆様も日々のお仕事においてご活躍され、チャレンジされているように毎日の生活の中でやりがいや、生きがいを見出してもらうそんな願いを込めて我々はこのようなイベントを開催しているわけであります。
この9月18日のトライアストン大会には小学校1年生から70歳までの方に参加していただきましたが、その中で宮城県の石巻から12名の中学生が縁あっての参加となりました。聞くところによりますと、その中学生たちには当初、葉山町に来ること、海で行われるトライアスロン大会に参加することに対して我々が想像する以上に大きな抵抗、恐怖感等があったようであります。大会の前々日に葉山町に来られ、海にいったわけでありますが、その時の彼らの表情は今でも忘れられません。海を見るだけで目を伏せてしまうような、下を向いてしまうようなそんな子供たちの姿がありました。しかし当日彼らは勇気を振り絞って参加し、地元の小中学生や大人たちと交流しながらこのトライアスロンを見事に完走しました。
彼らにとっては全く知らない人達から「石巻頑張れ!!」との熱い応援も多くあったことで、完走後、自分たちにはもっとできる事があるのではないかとの気持ちになって石巻に帰って行ったようです。
その後彼らから手紙が届きました。彼らは中学校3年生であり受験を控えた状況にあったものの、震災で
家も流されてしまい進学も諦めていた子もいましたが、「高校に行ってこんなことをしたい、将来こんなことをやってみたい」など、まだまだ頑張れることがあるのではないかとの熱い思いを我々に寄せてくれたのであります。そんなイベントができて本当に良かったと思っています。今年の3月にもまた葉山町にてランニング大会を開催いたしますが、石巻の彼ら達も参加してくれる事になっています。このトライアスロンには被災地の中学生のほか、障害や知的障害のある方も約20名参加しています。全盲の中学生の女の子が、水泳し、ボードでパドリングし、ビーチを走ったりしています。彼らを見ていて改めて思うことは、決して諦めてはいけない、諦めなければどんな可能性でもあるということであります。
私は別の仕事として、看護短期大学というところで「生命科学」という学問を教えています。そのなかでいつも学生たちに言っていることは、「命」の可能性は我々が知る以上に大きなものであるということであります。「病気であっても生きていることには変わりない、生きている限りは色々な可能性がある、生きていることもチャレンジである」ということを伝えています。
私はトライアスロンをかれこれ25年やっております。先ほどご紹介いただきましたように、数えれば 40回位完走しているかと思います。その中で一昨年までで10回だけですが世界選手権にも出場させていただきました。トライアスロンとは一般的には過酷なスポーツといわれておりますが、私自身が参加している中でいつも思うことは、必ずしもスポーツができる人だけではなく、病気を克服してチャレンジする人もいますし、先ほど話しましたように障害を持っていてもチャレンジする人もたくさんいるということであります。義足をはいて自転車に乗り、42キロ走る方もいます。何事にもチャレンジしてみようと思う人たちの競技それがトライアスロンなんだということであります。
昨年の「葉山トレイル」では走ることによって何か復興支援に貢献できることはないだろうかとの思いを持った方々に多数参加していただいたとお話しいたしましたが、私自身昨年はアメリカユタ州、カナダ、韓国、フランスの4カ国のアイアンマンレース或いは自転車レースに参加し、募金活動等を通じ日本の被災地の現状を世界に伝えてきました。我々は昨年、単に競技やレースに参加して自己満足するのではなく、今こそこのエネルギーを何らかの形で社会貢献に使えないだろうかという事をみんなで考え活動しました。
これは昨年だけで終わるものではなく、今後も半永久的に広く、私たち自身が取組んでいくべきことであると思っております。
冒頭に紹介していただきましたが、アイアンマントライアスロンの世界選手権は毎年10月にハワイ島で開かれます。実は私の友人がハワイ島にも何人かおりますが、その友人から震災直後メールが届きました。
その内容はハワイ島コナにあるロータリークラブの方々が、現地の主要ショッピングセンターの前で募金活動をし、約2万ドルというお金を集めてもらったが、そのお金を日本の復興支援に役立て方法はないか教えてほしいとのものでありました。私の妻の実家が仙台にあり、南三陸町の病院の看護師をやっている友人から、「避難所である学校体育館や公民館は人で溢れて寝る場所もない状態で何とか助けてほしい」とのメッセージをいただいておりましたので、その旨をハワイ島の友人を通じロータリークラブの方々に伝えていただきました。その結果、集めていただいた資金で「シュレッターボックス(テント・浄水器などの生活物資入っている箱)」を購入し、成田を通じ南三陸町に届けられることとなりました。このことは私がトライアスロンを通じてやっている活動の中で、たまたまハワイ島という世界選手権が行われている場所で出会った友人を介してロータリークラブの皆様とご縁があったのかなと思っております。そこに人と人との「絆」というものを改めて感じ、本日は皆様への感謝の気持ちも込めましてお伺いしたと思っております。
トライアスロンの会場に行きますと、いろいろな方がいます。年齢は60代70代の方まで、80歳の高齢の方もいらっしゃいます。病気を克服した人、障害を持っている人・・でも皆さん生き生きとされています。スポーツをすること、何かにチャレンジすることは命を蘇らせるそんな力があるのではないかなと感じます。昨年カナダの会場で出会った女性は22歳でガン(白血病)になりましたが2年間の闘病生活のうえ病気を克服し、今はトライアスロンをやっています。以前はガンを患ったことを隠していたそうですが、トライアスロンをやるようになった後、周囲に公表し、現在はガン患者に対し病気になっても必ず克服し、立ち直れることができるのだという勇気づけの活動を始めているようです。
我々はチャレンジアスリートファンデーションを昨年立ち上げましたが、そのなかでモットーとしていることは、「諦めないこと、チャレンジを続けていくこと」であります。チャレンジを続けていくことで幾らでも可能性が出てくる、それを私たちはトライアスロンというスポーツ・競技を通じて訴え、さらに自分たちにできる事はもっとあるのではないかを考え、スポーツイベントに限らず色々な形で広げ、伝えていく活動を積極的に進めていきたいと思っております。
まだまだ立ち上げたばかりの団体ではありますが、今後とも皆様のご支援やご協力を賜ればと思い今日はお話をさせていただきました。本日はありがとうございました。