活動報告
卓話:<東西の防衛>
千葉科学大学
客員教授
山下裕貴 様
みなさんこんにちは。時間が短いのでポイント絞ってお話しますが、日本が今、安全保障上・防衛上どのような環境に置かれているかという所をご紹介したいと思います。21世紀は戦争の時代と言われています。日本だけが平和だという訳ではなく、日本が置かれている情勢は非常に厳しいという認識の下、政府以下対応策をとっている所です。それらを考える際には日本の周辺情勢を見なければなりません。重要なのは中国・ロシア・北朝鮮ということになりますが、今日は中国について取り上げてお話したいと思います。
1.日本の周辺情勢【中国】◇経済:平成26年のGDPは7.4%の増加(日本の2倍以上)。◆社会主義市場経済。中国を統一された市場として捉えては駄目。巨大な経済体。地方に成長の為に競争させ政治的には高度な集中を保つ財政連邦。◆共産主義と資本主義との矛盾を抱えたままの経済成長。◆地方政府への経済分権を進め、体制上
の政治的権威を中央で確保する。地域間の競争がインフラや投資など経済成長に有利となる。◆供給過剰な生産→経済成長の減速、GDP6%台に。これからどの様になるか予測が困難。
◇政治:「虎もハエも叩く」→腐敗防止(地方に権限、共産党員・高級官僚・軍人の特権→腐敗温床) *ただし、叩きすぎると跳ね返る。反習近平グループが固まりつつあるのも事実。
◇外交:◆「核心的利益」→台湾、チベット、ウイグル自治区。一つの中国=大中華帝国の再現(独立を許すと崩壊)◆海洋権益も妥協しない姿勢→日米安保のある東シナ海ではやや抑制的、比からの米軍基地撤退の間隙の南シナ海では大胆に(九段線の理屈と人工島建設)。*米の堪忍袋の緒切れかかり(艦艇の派遣)。
◇国内の課題:格差社会、環境問題、資源・エネルギーの確保 ◆格差:地域間の格差は欧州より大。地域間・市民間・共産党員などの間。農村部と都市部では3倍の格差。高齢化は日本以上の速さ。全人口の12.8%が60歳以上(一人っ子政策の見直し)。 *1億の中産階級が安定した存在になるためには、11億の人民が格差を許容することが必要。→全ての農民・労働者が「苛立ち」として耐えている。これらを「生活圧力」と呼び11億の人民が我慢。彼らの許容が限界点に達することを共産党指導者は最も恐れている。◆環境:経済発展と市民生活、社会の安定に重大な影響を及ぼす。淡水の60%は重度汚染。◆資源:「近い将来、中国から水が無くなる(最多年間降雨量1750㎜)」 農民:水不足→有料水購入→農産物コスト高→廃農→都市流入農民→社会の不安定化。南水北調事業(長江上中下から引水線路) *エネルギーの確保が最大の問題点→経済成長のボトルネック。尖閣沖の海底油田(1968年のECAFEの調査、将来の世界的産油地域 1600億バレル) 「11億の人民の生活圧力を爆発させないためには、経済成長の持続が不可欠。安定的な経済成長にはエネルギー資源の確保が必要」→強力な資源外交と軍事力強化が必要。
◇国防:◆平成27年の国防費は約8896億元(16兆2132億円)、不透明な軍拡。◆総兵力:約233万人(自衛隊の約9倍)。◆陸軍:約160万人、戦車6840両、火砲1万3000門。◆海軍:約23万5000人、空母1隻、駆逐艦15隻、潜水艦70隻、戦闘機264機。◆空軍:約40万人、戦闘機1385機、爆撃機90機。◆ミサイル:ICBM×66、MRBM×134、SSBM×252。◆準軍隊:約917万人、武装警察約66万、民兵約800万、予備役約51万。
2.我が国の安全保障政策【組織】◇国家安全保障会議(外交・安全保障政策の舵取り、4大臣会議の定例化)
◇国家安全保障局(外交・安全保障の総合調整部署、12名の自衛官が勤務)
【計画体系等】◇国家安全保障戦略→防衛計画の大綱→中期防衛力整備計画→年度計画
◇年間防衛予算:約4兆9800億円(米国:約73兆2000億円)
【自衛隊体制】◇陸上自衛隊:15万1000人 戦車700→300両、火砲600→300門
◇海上自衛隊:4万6000人 駆逐艦47隻→54隻、潜水艦16隻→22隻
◇航空自衛隊:4万7000人 戦闘機260機→280機
3.南西地域における我が国の防衛【沖縄の地政学的価値】◇地理的特性等:沖縄本島、西表島、石垣島、宮古島など363島(49島が有人島)で構成。人口は143万人。
◇歴史:明との交易(冊封使)~薩摩侵攻~廃藩置県~沖縄戦~米軍施政~本土復帰。日本・中国と対等に交易、薩摩軍の侵略で植民地化、明治政府により王朝廃止、太平洋戦争の地上戦により約10万の県民が死亡
(鉄の暴風雨)、戦後のキャラウェイ高等弁務官に代表される厳しい米軍軍政、本土復帰と基地問題。*普天間基地移設問題に揺れる沖縄県民(一枚ではない賛否両論あり)。
◇沖縄県予算:平成27年7465億円(依存財源5225億円、自主財源2240億円)。*平成26年 内閣府沖縄担当部局3340億円、沖縄防衛局1666億円 *本土復帰特別措置法により保護される経済。◇米軍基地問題:銃剣で作られた基地との認識。
◇安全保障意識:日本と沖縄の安全保障→県民の60%が本土との意識障壁あり。
【南西地域の防衛体制】◇自衛隊:総数約6000人(逐次県出身隊員の増加→うんなんちゅうの軍隊化)。◇陸上自衛隊第15旅団:約2100人、軽戦力(戦車・火砲なし) *与那国島への沿岸監視部隊配置(平成27年)、宮古島・石垣島への警備部隊配置。
◇海上自衛隊第5航空群基幹:対潜哨戒機1個飛行隊、小型舟艇等。
◇航空自衛隊南西航空混成団:戦闘機1個飛行隊→2個飛行隊、高射部隊等
【緊張が続く東シナ海】◇尖閣周辺地域:日中の駆逐艦の睨み合い。中国海警局公船の領海侵入。
◇宮古島沖の通峡:中国海軍の太平洋への通路(6~7隻の艦隊) 艦隊行動の訓練、示威行動。◇対領空侵犯措置:平成26年943回(中国機464回、ロシア機473回)。南西航空混成団468回(対中国機主体)、北部航空方面隊286回、中部航空方面隊102回、西部航空方面隊87回。
【実効性のある防衛体制が重要】◇平和安全法制関連法◆平和安全法整備法(10個法の改正) ◆国際平和支援法(新規) *日本の防衛のための法整備:同盟国軍隊を防護、対等な関係に。*国際協力活動における自律性:自国で防護できる。当該国民・自国市民を救出できる。保護できる。
◇自衛隊の能力向上(ハードとソフト) ◆統合運用体制の強化:統合幕僚監部強化、陸上総隊新設 ◆装備の充実:オスプレイ。水陸両用車、新型戦闘機
◇日米同盟の強化 ◆日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し。切れ目のない防衛協力の充実・強化、地域及びグローバル・宇宙サイバーなどへの協力拡大。
◇豪州の準同盟国への格上げ ◆中国の進出に対する3国間の協力強化、実質的な日米豪三国同盟。