活動報告

<卓話> 自閉症のきみの心をさがして

2011年9月9日 第2941回 卓話

<卓    話>     「 自閉症のきみの心をさがして 」
シンガーソングライター うすい まさと 様
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 ご紹介に預かりましたうすいまさとです。今日はよろしくお願いいたします。今日は「自閉症のきみの心をさがして」と題しまして私の日々の話をしたいと思います。
『発達障害』というお話がありましたが、発達障害にも色々あります。自閉症やアスペルガー症候群などですが、これらは脳の障害です。自閉症をご存知でしょうか?自ら閉じこもる、と書いてあるので心の病気と思ってしまう方が多いのですが、実は脳の障害なのです。この発達障害というものが社会で色々話にあがってきたのがここ5~6年で、それより前の世代の人達は自分に生きづらさを持っている理由がわからずに苦労されている方がいらっしゃいました。そのような方が会社の中で色々な問題、コミュニケーションが取れない等あり、鬱やひきこもりの方の中でも大変多くの発達障害の方がいらっしゃると言われています。今日は自閉症のことを深くお話させて頂きます。
自閉症は人とコミュニケーションをとることが出来ない、急に予定が変わる事などが受け止められない、又一つの事にとても強いこだわりを持つなどがありますが、自閉症の中でも知的障害がある方とない方がいます。知能指数はとても高く皆さんと普通に話ができるのですが人の表情を読み取ることができない、自分の事ばかり話すなど脳の機能障害があります。脳の障害というのは一見わかりづらいものです。私はずっと音楽をやってきましたので、脳の障害の事を楽しく歌でわかりやすく伝えることができないかと思って生まれた曲があります。まずこれを聞いて頂きたいと思います。
~ 脳の歌 ~
 普段はライブ会場でギターを持って歌います。10月も横浜の下田小学校というところで一緒に歌ったりしています。小さい頃から歌う事で生きづらさを持っていたりとか、難しい事もあるけど皆で助け合って生きていこうというような事を学びながらやっています。最近は社会福祉協議会や教育委員会などからご依頼を受けたりしています。
先ほど歌にありましたが、脳には色々な働きがあるのですね。言葉を話す所、体を動かす所、そういう所に傷があるとうまく働かなかったりします。脳に前頭前野という所があります。相手とコミュニケーションを取ったりやる気を出したりする時に働く場所ですが、自閉症の子はどうもここらの情報伝達がうまくいっていないとわかってきました。色々な説がまだまだあるのですが、私が感じているのは脳の障害というのは事故があったり、病気があったりしたら誰しもなる可能性があると思います。脳の障害というのは皆の問題だと感じています。
このあとは長男なおとの話をさせていただきます。自閉症なのですが、4~5歳まで泣き叫んでいまして言葉も話さず、夜中も眠らず手を叩いて飛び跳ねたり等色々ありました。今10才になったのですが、色々な取り組みをした中で彼は人に興味を示しだし、妹に本の読み聞かせをするようになりました。自分の表現としてピアノの演奏などもしています。最近私は全国でライブ&トークということをしていますが、「なおと君つきでお願いします」という依頼が増えています。今年の7月も一緒に岐阜に行かせて頂きました。
自閉症というのはさきほど言いましたように、何度もいいますが脳の障害です。ここをよく知ってほしいのですが、その傾向というのは人それぞれ違います。そして行動にも理由があるという事を感じています。又声をかけても振り向かないなどがありましたが、接する中で彼らの中にもちゃんと心があるのだという事を感じています。
「こだわり」という事についてお話しますと、2~3歳になりますと、道にあるマンホールの上を必ず歩いたり、大きな声が聞こえると「ごめんねして」と知らない人に言ってしまったり、難しいこだわりがあります。無理にやめさせようとすると不安がり、自分を傷つけたり他のこだわりに走ってしまったりするので、家ではこだわりを生かしてみようということで取り組んでいます。
ひとつはこだわりを生かして良いものに触れさせてあげる、ということです。「ごめんね」と言ってほしいと言ったら「これを読んだらごめんねしてあげるよ」と百人一首カードを渡して学びに繋げていく、よいものにどんどん触れさせていくということです。もうひとつはこだわりを良い方向に繋いでいく、とても難しいこだわりに近いものを提示してそちらにしていく。もうひとつはこだわりを増やして不安を減らすという事です。不安があるからこだわりに走るということで、こだわりを増やしたら不安が減るのではないかと読み聞かせをしたり、乗馬をしたり一流の物に触れさせる事をしてきました。その中でなおとにとっては物語がものすごく大きな力になってきました。3歳の頃自閉症と診断されるまでは、親も何故泣いているのかわからない、本人も叫ぶことがありました。4歳の頃自閉症と診断され、保育園に通う中で突然絵を描き始めました。言葉もないし人とのやりとりも難しいのですが、このように自分の気持ちを表現できるようになっていきました。
5歳のある日、真夜中に突然泣き出す事があったのですが、言葉もないしコミュニケーションがとれないのでなぜ泣いているのかわからなかったのですが、紙とペンを渡したら絵を描き始めました。その絵を見て僕らははっと気がつきました。その頃大きなボンボン時計をよく見に行くこだわりがあったのですが、数日前に一緒に見に行くと約束していたのに行かれなかった、その事を思い出してわっと泣いたという事がわかりました。思わずぎゅっと抱きしめてしまいました。私の記憶では絵を通して初めて自分の気持ちを人に伝えた瞬間でした。なおとは色々な絵を描いています。PCも使います。最近は9歳くらいからポケットモンスターを表裏で描き、切り取って立体的にしています。うまく言葉でやりとりできなくても、だんだん日常をマンガで描くことができるようになってきました。

なおとは今小学校5年生ですが、先日「普通級の体育の授業中パニックになりました、家で話を聞いてあげてください」と学校から電話がありました。「学校辞める」と言うので紙と鉛筆を渡したところ、先生の教え方に納得がいかなく、先生に別れを宣言しています。一番最後に「おしまい」と書いてありました。この絵には色々な表情や思いが描いてあるのですが、現場ではこの気持ちを全部言えたわけではないと思います。彼らの中にはこのような気持ちがたくさん溢れている、と気がつきました。この絵を見て先生と沢山話をしました。皆の中で生きたいという思いを感じましたし、何か起こったらすぐ排除をしてしまう、そういう事を見ていたら、周りの子達も社会に出て会社で病気になったり生きづらさを感じている人に「あなたとは仕事ができない」と排除してしまうのではないかと思います。本当に皆知らないだけだと思います。彼らには気持ちがあって、苦手なことがあることを知って貰える機会があればいいなと思います。
なおとはその後ビデオを撮り、色々な物語を作ります。自分のオリジナルのキャラクターを人形にして 自分で物語を作る、きちんと背景も作ります。今10話くらい、頭の中には30話くらいあるようです。こだわりというものをとりあげるのではなく、うまく使って自分を表現する道を探してあげるということで自分を表現することができるようになってきました。こだわりは生かしてあげるのが良いと思います。なおとは保育園がすごく良かったようです。友達の真似をするようになったり、お遊戯などもして皆の輪の中で自信をつけてきました。皆の中で成長してきました。
最後に父親として、色々話してきましたがほとんどの事を妻がやっています。妻のHAPPYは子供のHAPPYに繋がる、妻を助けることが家庭全体をHAPPYにすることだと思います。家事を手伝う、妻が息抜きできる時間を作ってあげる、子供たちの将来についてよく話していく、ということをしています。
子供と関わっていて「なんでだろう」と思うことにも全部理由があるということがわかります。社会や学校で「困った奴、困った子」と思われがちの人がいても実際困っているのは彼らなのだということです。
足の悪い方には車椅子が、目の悪い方には眼鏡が必要です。発達障害の子には物ではなく「人の心」が必要です。想像する気持ちをぜひ持って頂きたいなと思います。彼らとコミュニケーションをとるためには想像する気持ちが必要です。私は日々彼らから人の事を思う気持ち、人の思いを創造する気持ちを学んでいます。そのことは今の社会でとても必要なのではないかと思います。最後に私の活動の様子のNHKのニュースを見て頂きます。ありがとうございました。

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