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<新会員卓話 2>   「愛すべき幾つかのボードゲームについて 」

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                                     秋 本 義 紀 会員

307702.jpg昨年8月入会の秋本です。新会員卓話で趣味の話をしても良いとのことでしたので、私が若い頃から親しんできましたボードゲームについての話をさせて頂きます。

ボードゲームって何だという方もいらっしゃるかと思います。競技者がボード(日本語で「盤」)をはさんで向かい合い、ボードの上にコマを置いたり、コマを動かしたりして、勝ち負けを競うものです。ボードゲームには色々なものがあります。皆さん良くご存知のものが多いと思いますが、具体的に見ていきましょう。

 ・サイコロを振って子供さんが楽しむ 「双六」。 

 ・株式会社タカラの超ヒット商品 「人生ゲーム」。

 ・1930年代に米国、英国で発売され、いまだに全世界に愛好者がいる「モノポリー」。

 ・明治時代に日本に伝来した「リバーシ」を、名前を変えて発売し大ヒットとなった「オセロ」。

 ・奈良時代に日本にも伝来し、賭博として大流行した「バックギャモン」。

 ・かつて欧米社会で「人間の知性の試金石」と言われた「チェス」。

 ・日本の庶民に広く親しまれてきた「将棋」。

 ・現在、最も奥の深いボードゲームとされている「囲碁」。

 但し、私にとっては、必勝法が判っているものは、面白くありません。また、サイコロなどの偶然性に大きく支配されるのも面白くありません。ということで、ボードゲームの中でも、知性が必要と言われるゲームをこれまで楽しんで来ました。今回は、これから先、チェス、将棋、囲碁の3つに絞ってお話しすることにします。

 

先ず、ボードゲームの複雑度について簡単に触れておきます。

チェス、将棋の順で複雑度が高くなり、囲碁はダントツに複雑度が高い、ということを覚えておいて下さい。
次に、チェス、将棋、囲碁の歴史に触れておきましょう。

チェスと将棋の先祖は共通で、インドに現在も残っているチャトランガというゲームであろうと言われています。西に伝わったチャトランガはペルシャを経て9世紀ごろ西ヨーロッパに伝えられ、駒の種類やルールも変遷しながらチェスになりました。プロプレイヤーの組織もでき、1886年には世界選手権が開催されています。一方、東の中国や、南のタイにも伝えられていきましたが、日本にも、10乃至11世紀ごろ伝来し、日本の将棋となったようです。チェスと同じように、将棋にも専門家と呼ばれる人達が登場してきます。 江戸時代には幕府の庇護を受けるようになり、明治以降は大手新聞をスポンサーとしたプロプレイヤーの組織ができて、現在では日本将棋連盟所属のプロが約160名います。

次は囲碁の歴史です。囲碁の起源については諸説ありますが、紀元前500年くらいの中国ではないかと言われています。中国では教養の域にまで達する遊戯として愛されましたが、日本に伝来したのは飛鳥時代、7世紀ごろとする説が有ります。 囲碁にも、権力者による専門家の庇護や家元制度が見られます。現在、日本だけで約400名のプロプレイヤーが囲碁で生計を立てています。

要するに、チェス、将棋は2000年弱、囲碁は2500年の歴史があり、数百年にわたってプロプレイヤーが権威ある存在として認められて来た。と言うことです。

 

さて、ここで話は変わりまして、コンピュータの性能進歩の話になります。

パソコンが普及する前は、コンピュータといえば大型コンピュータしかなく、なかなか一般人が使えるものではありませんでした。計算速度も1960年代前半では1メガFLOPS程度で、今から思うと、おもちゃのようなレベルでした。(FLOPSというのはコンピュータの性能指標の一つで、単純演算が1秒間に何回できるかを表すものです。1メガFLOPSというと1秒間に百万回ということです。)しかし、その後、メーカーの競い合いで、現在までに約10億倍スピードアップしてきました。

また、パソコンもその性能進歩は目を見張るものがあります。1974年に世界初のパソコン「ALTAIR(アルテア)」が発売されましたが、2メガFLOPSのCPU「インテル8080」が搭載されていました。これが、現在では10万倍早くなっています。

こうしたコンピュータの性能進化の過程の中で、先ずチェスの話ですが、1990年頃に、コンピュータにチェスをプレイさせて、人間の世界チャンピオンを打ち負かそう、というプロジェクトが米国で始まりました。 コンピュータによる擬似知能が人間の知性に迫れるか、更には凌駕できるか、という初めての試みとも言えるものでした。

人間の世界チャンピオンとして、コンピュータの挑戦を受けてたったのは、ゲイリー・カスパーロフ。 1985年に22歳の若さで世界チャンピオンになったソ連の天才。挑戦したのは、米国IBM社のプロジェクトチームが開発した「ディープ・ブルー」(ハードとソフトの総称)でした。

1990年に最初の対決があり、コンピュータ側が大敗。1996年に2度目の対決があり、人間カスパーロフの圧勝。そして、1997年、3度目の対決の場が訪れました。知性溢れる人間と血も涙も無い機械との対決、というマスコミの取り上げのせいもあって、一方で人間の優位性を確認したい期待感、もう一方でプロを名乗ってきた人間の権威・特権に対する反感、人間の知性に対する風刺を煽ったものとなりました。結果は、初めてコンピュータが勝利し、社会に衝撃を与えることとなりました。この対決は、コンピュータプログラミングが人間の判断を助けるうえでの有用性を確認する機会として、貴重な肯定材料となったと言われています。蒸気機関車が発明されたときに、馬車と公開競走をして有用性を認識させたのと良く似ていると言われます。

今、お話した1997年のチェス対決ではスーパーコンピュータが用いられましたが、その後パソコンも性能を上げてきて、2000年台前半には、パソコンベースの市販ソフトが、世界チャンピオンと渡り合えるまでになりました。現在では、チェスでパソコンに勝てる人間はいなくなってしまいました。プロのチェスプレイヤーの権威や収入は大いに下落してしまいました。

次に、将棋でも同様な対決があったのでお話しましょう。

将棋はチェスよりも複雑度が高いので、ソフトウェアの開発も、チェスより遅れて展開されましたが、2001年には市販のパソコンソフトが人間のアマ有段者(秋本のこと)にほぼ互角にまで強くなっていました。けれども、プロの将棋指しには全く相手にされていませんでした。しかしながら、パソコンの性能はどんどん向上し続け、ソフトウェアも目覚しく進歩していきました。そして、2013年になって、ついにプロの将棋指しとコンピュータとの団体戦対決が実現しました。プロの将棋指し5人が、5種類のパソコンソフトの挑戦を受けて立ちました。

プロの将棋指しチームは、神社に参拝して、斎戒沐浴、決戦に臨みましたが、結局、人間のプロ側が敗北してしまいました。プロチームの落胆ぶりはひどいものでした。この人間の敗北は、衝撃的な出来事としてNHKはじめマスコミでも伝えられました。ただ、1997年のチェスの例を知る者にとっては、衝撃よりもいつか来る歴史的必然の到来といった感が強かったと思います。

この将棋対決で人間の敗北を目の当たりにして感じたことは、

・数百年続いてきたプロの将棋指しの権威は、プログラマー達により20年ほどで、ほぼ完全に破壊された。約160人の現役プロ将棋指しの生活はこれからどうなるのか?家元制度、師弟制度などの伝統的価値観はどうなるのか?

・機械であるコンピュータに勝てなかったプロのチェスプレイヤーや将棋指しは、権威失墜した。 一方で、機械である自動車には勝てないウサイン・ボルトが陸上競技のスーパーヒーローとしてもてはやされるのはどうしてなのだろう? 考えれば考えるほど、良く判らなくなってきます。

・人間の知性とは、何か? コンピュータも知性を持つ存在と成り得るのだろうか?

といったことでした。 

 

チェスの対決、将棋の対決と話をしてきましたが、囲碁については今日まで、囲碁のトッププロがコンピュータプログラムに敗れたという話はまだ有りません。囲碁については、まだ人間の知性の優位性が崩壊していないということです。しかし、市販ソフトを購入して自宅でコンピュータと時々対戦している私の感触では、囲碁プログラムが進歩して、トッププロを凌駕するのはそう遠くない、10年後か20年後と感じています。私はプロではないので、この現実を率直に受け入れて、また、時々は知性とは何なのかに思いを巡らせながら、これからも趣味としての囲碁を楽しんでいこうと考えています。

時間もきましたので、以上で卓話を終わりますが、会員の皆様方の中で、囲碁をたしなまれる方がいらっしゃったら、一度、秋本にお声掛けをお願いしたいと思います。 ご清聴有難うございました。

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