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<卓話>「 勝つべくして勝つ経営 」

株式会社せおん 代表取締役 越 純一郎 様
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越純一郎と申します。どうぞ宜しくお願い致します。今日のお集まりは、こちらの歌詞にもある通り、とても和みというものを感じますけれども、私はもう少し尖がった経営者たちを集めて、毎年、社長塾をやってまいりました。しかし、今年は、この社長塾は中止しております。それはなぜかと言いますと、現在、あと5ヶ月で千葉幕張にオープンする児童教育のテーマパーク事業に携わっておりまして、私自身が非常に忙しくしているためであります。
まだ誰も気づいていないマーケットを見つけろ
それで、今日は申し上げたいメッセージを1つだけに絞りました。そのメッセージに入る前に簡単に背景みたいなところから入りますと、世の中には金儲けが下手な人、金に縁のない人が非常に多いです。また、ぼんやりと生きている人が非常に多いです。私はアベノミクスを手伝ってきましたが、3本目の矢というものは、あまり役に立つものではありません。下手なところに補助金をばら撒いて、高度成長がもう一度来るとでも思っているのかと私は申しております。それでは一体何が大事かと言いますと、経営者の質を高めること、これが非常に大事です。皆さん、突然、自分が英語とフランス語を全く不自由なく操れるようになったと想像してみて下さい。もしそうなったら、あなたはシティバンクの経営をすることができますか。日本の経営者のレベルは決して高くありません。このようなことを私が申し上げた時に、受けて立とうではないかと言ってくれる経営者は日本には非常に少ないと思われます。私が12年間、ニューヨークに住んでいた時、「まだ誰も気づいていないマーケットを見つけろ」という言葉をよく耳にいたしました。アメリカにおいて、よく聞かれるこの言葉は、実は前半の言葉でありまして、後半には「誰かが気づいて真似をしてきた時のために手を打っておけ」、「真似をするためのコストがかかるようにしておけ」、「真似をするのに時間がかかるようにしておけ」、「真似をする価値のないようなつまらないマーケットにしておけ」という言葉が続きます。この後半部分は「焼け野原にしておけ」という意味で、日本語では「焼け野原作戦」という言葉としてよく翻訳され紹介されているようですが、これは後半部分のみに焦点を当てているため、前半部分、つまり「まだ誰も気づいていないマーケットを見つけろ」という言葉の意味が含まれていません。むしろ私としては、こちらの前半部分を今日、皆さんにメッセージとして持って帰っていただきたいと思っております。
プロダクト・アウトからマーケット・インの時代へ
私は2000年に日本興業銀行を45歳で退職して、その時はニューヨークにいたのですが、そのまま秋田県に移住して、秋田で地元の会社3社を再建するのに7年を費やしました。そのような人生を送ってきましたが、ちょうど2000年頃、ニューヨークで聞こえてきたのは、日本で介護保険ができるという話題でありました。介護保険が制度化される、成長分野である、ビジネスチャンスであるという話が新聞などで伝わってきたのでありますが、私は我が祖国の経営者がどうしてこんなにもレベルが低いのかと嘆いたものです。
「まだ誰も気づいていないマーケットを見つけろ」と言っているときに、介護保険のことなどは誰でも知っていることなのです。なぜそんなものがビジネスチャンスなのかと欧米の人達にとっては理解できないことなのです。そんなことを考える愚かな経営者は日本にだけいるらしいと信じられない気持ちでした。
そこで私が手掛けるマーケットですが、競争者が入ってこないマーケットだけにしています。競争者が見えたら手掛けません。競争者のうち、目の前の競争者はまだ良いのですが、将来、誰が参入してくるかを見抜くのは相当難しいことであります。つまり結論から申し上げますと、出来ることをするのではなく、勝てることをして下さいということなのです。出来るかどうかという問題と、勝てるかどうかという問題は全く別問題なのです。このようなことを話せば高校生でも分かってくれると思うのですが、日本の経営者だけが分からないのです。やれることをやっても勝てるかどうかは分からないということは、世界の経営者は分かっていると思います。また、このことに関して補足しておきますと、出来るかどうかということは自分の問題ですからすぐに分かるのですが、敵に勝てるかどうかということはマーケットリサーチをしなければ分からないのです。マーケットリサーチをして敵と比べて、どちらが強いかという段階まで至れば、まだ良いのですが、誰が敵なのか分からないという状況が非常に多くあります。それから敵が今何を開発して、いつどのような製品を発売して、それがどのような性能なのか、それを見抜くのは本当に大変なことなのです。やはり勝てるかどうかという見極めは非常に難しいことなのです。
高度経済成長期はプロダクト・アウトで良かった、つまり作れば物は売れました。このプロダクト・アウトというのは高度経済成長期という作れば売れるという特殊な時期だけの話であり、もうすでに高度成長期は終わってしまったのです。したがって、少子高齢化がこの先、半永久的に続き、高度経済成長期のように作れば売れるという時代はもう二度と来ないのです。そうすると今度はマーケット・インということが必要になります。これはそこにマーケットがある、そこに入れていただくということなのです。マーケットに入れていただくためには、まずリサーチしなければなりません。そのマーケットが欲しているものを、欲しているタイミングで、欲している数量だけ提供する、これがマーケット・インです。よってプロダクト・アウトとマーケット・インの違いは、マーケットリサーチを必要とするかしないかの違いということになります。出来ることをやったからといって、必ずしも勝てるかどうかということは分からないという問題に直面しているのが、今のこのポスト高度成長の時代なのです。
参考事例
特許が参入障壁として頼りになるということは非常に少ないと言えます。中小企業が特許で身をたてるということは非常に難しいので、特殊なラッキーがない限り、特許のことは忘れていただいて結構ですというのが私の皆さんに対するアドバイスです。特許は取得してしまうと、いろいろな不服申し立て、チャレンジを受けますので非常に大変です。それから中小企業の方は、特許のことをもっと勉強したほうが良いと思います。特許については偶然のラッキーがあれば、やっていただいて結構なのですが、それを最初から狙って特許で身をたてていこう、事業を守っていこうということはとても大変なことであるということは覚悟しておいて下さい。それから小さい市場で大きなシェアを取る、このようなことに気づいていない経営者が非常に多いように思われます。会社が新規事業をする際には、いろいろな候補を並べます。その候補を収益率の順番で並べた時に、普通の方は上から順番に検討しますが、あの日本を代表する経営コンサルタントであった浅野さん(浅野喜起氏)は収益率の低い順番に検討したそうです。これが意味するところが分かりますか。つまり、参入障壁がなくて収益率が高ければ、誰でもやろうとして競争が激しくなる。そんなものばからしくてやっていられない。そういうことなのです。そんな収益率の低いものをあなたがするならば、あなたに任せますよといった感じで、他の人が私の事業に手を出さない。私はこのようなやり方は好きですね。低収益だけれども、必ず黒字になっていく。地場の優れた中小企業というものは、およそすべからくコツコツまじめに事業を行い、少ない利益かもしれないけれども決して赤字転落をしない、そのような強い会社です。私が過去に経営相談を受けたり、或いは自分で社長になって再建をしてきた会社においては、「細く、長く、確実に生き延びられる」ということをいかに実現できるかに重点を置いてまいりました。ですから、低収益性というものを決してばかにしてはいけません。皆さん、普段はこのことを気にしないで経営をされているのではないかと思うのですが、今後はぜひ気にしながら経営をしてみて下さい。低収益性を事実上の参入障壁とするやり方で自分を守ることが出来るようになったら、かなり良い思いをできる可能性があります。
最後にもう一度、出来ることをやったからといって、勝てるわけではないのです。競争者がいたら、どちらかが勝って、どちらかが負ける、必ずこの問題が起きるのです。それをお考えになって商売をして下さい。これだけです。そして、政治家にもがんばってもらいたいのですが、なんだかんだ経済社会を支えているのは我々実業家です。我々がしっかりしていかなければ、日本はしっかりしていかないのです。そのためには、今日の皆さんお一人お一人に金のにおいがする人間になってもらいたい。金のにおいがする経営者になっていただきたい。それが今日、私がお時間をいただいて、お伝えしたかったことです。どうもありがとうございました。
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