卓話
週報
卓話
例会
ホーム  >   卓話   >   卓話 「 骨粗鬆症を例に薬を考える 」
卓話

卓話 「 骨粗鬆症を例に薬を考える 」

<卓話>          「 骨粗鬆症を例に薬を考える 」
神奈川歯科大学生化学 教授 高 垣 祐 子 様

222.gif はじめまして、高垣でございます。ただいま飯塚会長からご丁寧な紹介をいただきましてありがとうございます。私は横須賀に来ましてだいぶ経ちますが、ロータリーには実父が仙台の方でお世話になっていたこともありますし、たくさんの友人がロータリーで留学させていただいたものですから、ロータリーは大変親しく感じております。本日お話しさせていただくのは、私は骨や歯の研究をずっとアメリカ時代からやっております。今もこの20年来研究しておりましたのは、人間で言えばいかに運動が大事か、それと食べ物も大切ですが、薬というのは二次的な物であります。薬には裏と表がありますので、必ずしも我々がそれを取る側に一番QOLを良くするためとばかりとは言えない事情で売られている場合もあります。製薬関係の方がいらっしゃったら失礼申し上げますが、私どもの基礎の立場からそういった事を言わせて頂きたいと存じます。今皆様もご存じの様に日本はものすごく早いスピードで高齢化を迎えております。私もそうですが、団塊の世代でそれがすべて高齢者になった場合には、若い世代への負担はとても大変な訳で、それは個人的なレベルですが、私たちが何とか防ぐように、今から考えておかないといけないとも思っております。
骨粗鬆症の患者さんが2千万人ともいわれますがどんどん増えています。骨粗鬆症が怖いのは、それだけの病気でしたらお薬もありますし、対処の方法もあるのですが、骨が弱くなることによって転んでしまう。転んでしまった後が怖いのですね。好発部位はいくつかあるのですが、大腿骨の骨折が致命的なのですが、股関節の所がよく折れまして寝たきりになる方の受症後、1年以内の死亡率というのが1割、寝たきりになる確率はもっと高いのです。これは日本の数字です。日本は昔から畳を使っていましたから、足腰がしっかりしているという話があり、西洋人よりはデータ的には良かったのですが、それでもすごい数の方が、本人にとってもご家族にとっても負担な状態に陥ってしまう訳です。寝たきりの原因には、血管障害とか衰弱とかいろいろありますが、13年の厚生省の数字でいいますと12%が骨折、転んだ事による骨折で12%が寝たきりになってその1割が1年以内に亡くなるということです。
それにかかる医療費を団塊の世代が若い人たちに強いる事になるわけです。それをなんとか個人のレベルでも国のレベルでも、お金の事だけでなく、個人個人の質の良い今後の時代を過ごしたいという一人ひとりのためにも切実な問題です。どうすればいいか?薬があるじゃないかと言うように考えがちなのですが、必ずしもそうではありません。それで私たちは実験をして、人間ではデータとしてとれない部分を私たちの研究でやっていくのが主に私共の仕事です。ラットのモデルというのが比較的安価で一匹2500円位で買えるのでそんなに高くなく数をそろえられます。統計的なデータというのは個体数を増やさないと取れません。猿でやろうとしたら億万長者でないとできませんから、私たちはラットでやるわけです。
女性が閉経後に骨粗鬆症なるというのはよく聞かれると思いますが、それのモデルとしては、ラットやマウスでも猿でもいいのですが、卵巣を取ってしまいます。そうしますと、年齢に関係なくほぼ閉経後のモデルとしてかなり解析にたえうるものをつくることができます。不動もいろいろございます。尻懸垂というのはラットの尻尾を吊り、前足だけで動くようにして後足が使えず力がかからないことで不動にさせたり、
筋肉や神経を切断してモデルラットをつくります。
しかし実際はよく考えてみますとだんだん年をとっていくとアクティビティが下がってきて、1日の運動量も下がって、歩く距離も下がって、実際調べてみますと一週間にほとんど外出しないという状態の方というものは、ものすごく骨が劣化してしまいます。そしてちょっとしたことでも転ぶ、そしてその後の事は先ほどお話した通りです。不動というのは、薬あるいは運悪くそうなってしまった方の対処ということで、おもに病院あるいは薬というのが不動にはかかってくる訳です。この不活動というのは、一人ひとりが今の内から防いでおかなければならない重要なファクターでありますが、これにはラットのモデルは無いわけです。
どうしようかと考えまして、マウスのゲージをさらに仕切り狭いところにラットに入ってもらいます。ラットというのは暗く狭い所が好きなようで、コーチコセロンという、ストレスがかかっているか調べる生体内の物質があるのですが、それを見てもこれは他の尻尾を吊ったものと比べてもストレスにはなっていないようです。そのように動物で実験します。一群の動物には疑手術、対照群ですね。卵巣を取って閉経のモデル。それから不活動のモデルを比べてみます。13週間飼育し、体重を計測他いろいろしますが、その後骨を取り出し調べます。体重と骨との関係は思ったほど統計に優位な差はありませんでした。ではその骨をどのように評価しようかと、普通いわれるようなファクターはあまり変わってないということ。そうしますと骨に沈着しているミネラルの量とか密度、形も関係してきますのでそれらを比較することになるわけです。よく骨がすかすかになるといいますが、それは中の部分で骨の中は、力が分散するように非常にいい構造をして、海綿骨がはりめぐらされております。一カ所に力がかからないようになっているわけです。大腿骨が折れるというのは筒になっている部分の皮質骨が折れることで、これが折れると大変な訳です。これから申し上げますデータは、金属の非破壊検査の手法を取り入れ、CTの種類で中の骨の様子がすぐわかります。
これを使って先ほどの三種類の対照群と模擬閉経群と模擬不活動群を比べてみますと、すかすかになる部分の海綿骨は閉経群で無くなってしまいます。不活動は落ちてなく、骨の中の海綿骨がすかすかになるのは閉経群が非常に悪いという結果です。さらに定量的に計れる別のCTを使ってみると、皮質骨の部分がもっとよく調べられるわけです。その皮質骨が折れると致命的であります。耐えきれない力がそこにかかると皮質骨が折れて骨折ということになります。海綿骨がつぶれてしまうということは、よくお年寄りで腰が曲がっているのは、脊椎の中の海綿骨がつぶれてしまい曲がって固定してしまっているということです。ですから、海綿骨も大切なのですが、大腿骨骨折というようなQOLを下げる様な大きな骨折というのは、皮質骨が大事でそこを今、私たちは計ろうとしております。いろいろ非破壊検査等々を行い、皮質骨の部分を検討しますと、実際解ったことは、海綿骨がすかすかになる閉経群と比べまして、1週間に1マイルとか2マイルしか歩かない人たちが陥る不活動の人たちの骨というのは、意外に海綿骨は衰えておらず、ではどこがおかしいのかということになり、強さを計ってみようと別の計測器で検討します。計測器で三点に力がかかって骨を固定し、上からバーを落とし折れたときのデータを解析します。そうしますと対照群と閉経群の骨は変化が無く、あまり歩かずじっとしているラットは皮質骨が駄目になっているという事がわかりました。
まとめますと、今まで骨粗鬆症というとすかすか病といい、骨の中の編み目の様になっている詰め物の部分が、無くなってすかすかになるから骨が折れるという説明をしていたのですが、実際はそれでは骨は折れていないのです。折れるのはやはり一見特に害のないと思われる不活動、あまり運動をしないでいる状態とおぼしき模擬ラットは、かなりの部分で人の状態と似ているのです。あまり害が無いと思われる不活動の結果として大腿骨が折れてしまう。これは侮れません。検査に行って骨密度がそんなに悪くないから大丈夫だと思うというような時に、どこをちゃんと調べていたかということを、ご本人が把握しなくてはいけませんし、普段の食べ物を含めた生活がとても大事だと思います。そして不活動群では皮質骨の低下する原因はいったいな何なのか。不活動に違いないのですが、どういったメカニズムでそういう事になってしまうのかということです。骨全体でミネラルが減ってしまうということは、確かに骨を溶かす細胞が骨を喰ってしまうとミネラルが減りますから、剛性とか堅さは落ちていきます。ただ骨折のリスクというと、粘り強い骨にするのは決してミネラルが多いことではなく、中の素になっているタンパク質の90%がコラーゲンなのですが、そこにミネラルがのっかっていくということを骨の細胞が作る時にしているのです。鉄筋の建物で例えますと、コンクリートがミネラルで鉄筋がコラーゲンということです。ですからそのコラーゲンを良い状態にしておかないといけないのです。それを私たちは骨質と呼んでおります。昔は骨強度、骨粗鬆症といえばすかすか病でしたので海綿骨の粗になった状態がいけないと扱われていたのですが、今は整形も内科の先生方でも骨質ということを大変強く言います。それはいろいろあり、代謝回転が速くなる、微細構造が崩れてくる、それから骨というのは目に見えない小さな骨折を蓄積しており、それがきっかけになり、骨の作り直しをどんどんやっておりますので、運動さえしていれば補充は効くのです。その補充をしないとコラーゲンの劣化が、例えばコラーゲンに糖がついてしまったりします。高齢になることで仕方がないのですが、運動をすることにより少しくい止めることができます。骨のコラーゲンに異常がみられる、骨質というのはコラーゲンの質がかなりの部分を占めていることが研究されて解っております。私たちはこれを見るためにレーザーラマン分光法という工法を用います。今は骨や歯のミネラルを検査するときには無くてはならないものです。それの良いところは、波長の様にいろいろな物質、例えばタンパクの構造ですとかリン酸とカルシウムでミネラルができていますので、そういったものを顕微鏡で覗きながらボタンを押すことで波長がでてきて結果がみられます。タンパクの性質のコラーゲン成分とミネラルの性質を同時に波長として表現できコラーゲンのダメージやミネラルの減などが同時に見ることができます。そのような方法でやってみますと、最初にお見せしました結果とはずいぶん異なった結果となりまして、閉経は不活動と比べてほとんど害がなく、対照群もあまり変わりません。ところがちゃんと歩いていない不活動をしていますと、その不活動のラットはほとんどいろいろなパラメーターでコラーゲンの質が悪くなっています。外からは見えないので分かりませんが、レーザーをあてて調べてみると質が悪いことが解ります。いわゆる今までよくご覧になっていた、すかすかになった骨の方は閉経後仕方がないのですが、意外に強さに対しては守られているということが解ってきて、実際は不活動が原因のコラーゲンの劣化、それに伴う骨の劣化、それがもっともっと私達の生活の質を下げるような骨折に結びつくものだということが、モデルの解析から解ってきたわけです。
まとめますと、不活動の方がコラーゲンの質は悪く、ただエストロゲンが無くなった年をとった女性だけが骨粗鬆症というのは必ずしも折れやすい骨では無いということ。そうではなくてきちんと運動して、きちんと食事をしないと起こる不活動の方がもっと致命的な骨折を導くということが解ってきました。
したがいまして、不活動による骨折を防ぐためには、1に運動、2に運動、3に運動ということになるわけです。運動が十分できない方には、薬が事前の策にはなります。強力な武器なのです。ところが今行われている事は、高齢のお母様や奥様のお薬でビスフォスフォネートというのをご覧になったことがあると思うのですが、閉経後の海綿骨にはビスフォスフォネートが効くのですが、骨が劣化するメカニズムが全然違う方の不活動群にも区別無く、ビスフォスフォネートが処方されている訳です。それは今の現実として区別はしておりません。ですから自分で理解して身を守るしかありません。そういったことはテレビでは言いません。興味のおありの方は、これらのデータが反映されている「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」という本、書店にはおいてありますが、インターネットでもダウンロードできます。学会の先生方が何年おきかに改訂もしております。最新版は2011年版です。そこで使われている骨粗鬆症の薬ですが、一番多いのは海綿骨に対するビスフォスフォネートなのです。骨が折れる予防薬は、実はいろいろある中で二つだけ上げます。ビタミンK2と副甲状腺ホルモンです。薬の事を調べればすぐ出てくる骨粗鬆症の薬なのですが、海綿骨の方にはそんなに効きませんが、防がなければならない不活動による骨の劣化にはビタミンKが効きます。ビタミンKは納豆にものすごくたくさん入っています。骨粗鬆症の世界では、西高東低という言葉がありまして、西に行くほど骨折の割合が高いということです。調べるとビタミンKの血中濃度が違ったのです。納豆の好き嫌いでビタミンKの濃度が下がるという論文も出ております。ですから、私も二日に1回は納豆を食べます。納豆食べて、ジムにも行っております。それで身を守ります。
薬が効くか効かないかというと、ビスフォスフォネートという薬をほとんど皆さんに処方されているのですが、対照群のように病気でない方には実害はありません。しかし閉経後のために起こる骨粗鬆症の方にはものすごく良く効きます。不活動の骨には全然効きません。これは典型的に一番使用されているアレトロネートというビスフォスフォネートをラット版で体重あたり同じ量投与したあとの結果でも、私達が問題にしている骨折には効かないということが解ります。ですから、納豆を食べて歩くだけでもよろしいです。それぞれに応じた方法で運動をして下さい。歩くということは、自分の体重を支えて距離をかせげば、ちゃんと重さがかかって骨にインパクトを与えますので、そのインパクトが皮質骨を強くします。柔道の受け身などはとても良いのですが、私にはできませんのでできる範囲でやっております。
本日お話させていただいたのは、今まで言われてきていた、すかすかの骨の骨粗鬆症には確かにビスフォスフォネートは良いお薬です。ところが活動が低下したような状態で骨が折れやすくなるという皮質骨のダメージには、運動と納豆を日常やっておいて、そしてもっとメリットがあることには、ラット研究で解明
したことは、ビタミンKを投与して運動をある程度するかしないかのラットをつくっておいて、その上でビスフォスフォネートを投与すると強固な骨ができます。ですから今、転ばぬ先の杖で、納豆を毎日きちんと食べて運動をしておけば、転ぶ機会も減りますし転んだときに骨折しても、骨粗鬆症といわけてビスフォスフォネートを投与されたときにも心配しなくてすみます。あらかじめ骨を造る準備をしておけば、コラーゲンの効いた鉄筋ができておりますので、ビスフォスフォネートで破骨細胞を抑えてミネラルをどんどんのっけてやれば、期待したような丈夫な骨ができるわけです。ところがそれをしておかないで、突然ビスフォスフォネートをあまり運動しない方がもらってしまいますと、全然だめで折れてしまうと考えられます。しかも歯医者の先生方が何人かいらっしゃいますが、患者として歯医者さんにいかれたかたでも、ご覧になったことがあると思いますが、ビスフォスフォネートを飲んでいる方は必ず事前におっしゃって下さいと張り紙があります。ビスフォスフォネートには弊害もありまして、ビスフォスフォネートを長い期間飲んでいると、ミネラルが沈着して骨が硬くなるのです。ちょっとしたエネルギーがかからないような衝撃で簡単に折れてしまうということが10年来投与され続けたあげくに解ってきたのです。さらに2003年頃から顕著になったのですが、ビスフォスフォネートの投与が進んで初めて明らかになったのですが、歯を抜いたところが腐骨という駄目な骨、悪い骨になってしまっていて、抜歯のあとが治らなくなってしまったのです。そういうことが解ったのです。ですから今は歯医者さんでは投与を受けている患者さんの歯は抜かない方法、それからバクテリアも関与しているので、口の中を常に綺麗にするという方法である程度は防げるのです。長い間、骨粗鬆症のために良いとお薬を飲んできた女性がものすごく多くいらっしゃるわけで、そういう方は、歯を絶対に抜いてはいけなくて、いざというときには歯医者さんの管理下で抜くことは可能なのですが、歯の抜いた後が治らなかったり、それから思わぬところで転んでもないのに、力もそんなにかかっていないのに、大腿骨が折れてしまうという異常な出来事が今、蓄積しています。それは全てこのビスフォスフォネートの因果関係があるとかなり証明されています。
ということから、お薬というのはものすごく良く効くのですが害もありうるということで、それぞれがご自分の体のことをよく考えてコントロールいたしましょう。
ホーム  >   卓話   >   卓話 「 骨粗鬆症を例に薬を考える 」
ページの上に戻る