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<卓話>アメリカ大リーガ-、高額年俸の秘密

<卓話>アメリカ大リーガ-、高額年俸の秘密

一般社団法人 ディレクトフォース
藤 田   卓 様

只今ご紹介に預かりましたディレクトフォースの藤田で御座います。本日は、伝統ある横須賀ロータリークラブで卓話をさせて頂くということを大変光栄に存じておる次第です。
 タイトルは、「アメリカ大リーガー、高額年俸の秘密」を選びました。ダルビッシュがテキサスレインジャーズに移りましたね。これが史上最高、入札金を含めて松阪を上回る1億1千万ドルを超える額であったということで、皆さんの関心も高く時機にかなったものではないかと思い選びました。
 今、映像に「MLBを通してみるアメリカ」が出ていますが、これは本日のタイトルのどちらかと言えば、オリジナル版に当たるものです。私自身がこのタイトルで7~8年色々携わってきておりまして、最初に皆さんに是非お伝えしておきたいポイントが御座います。それは、メジャーリーグベースボール(MLB)は、アメリカ社会を映し出す鏡とか窓といわれることです。アメリカの独立宣言が1776年、その丁度100年後にメジャーリーグベースボールが誕生しております。1876年の誕生以来、現在に至るまで約140年の月日が経っておりますが、その間、アメリカ社会とメジャーリーグベースボールは、お互いに持ちつ持たれつ影響を良きにつけ悪しきにつけ与えあってきた関係だと理解して宜しいと思います。この100年間に色々なことがありましたが、その中の一つを紹介します。それは、1947年ですから、第二次世界大戦が終わった直後に、ご法度だった黒人選手(ジャッキー・ロビンソン)をメジャーリーグベースボールのドジャースが初めて雇ったことです。これをきっかけにして、アメリカで黒人差別撤廃運動が盛り上がっていきました。それでも100年以上続いた差別ですから、紆余曲折あって時間はかかりましたが、十数年後の1964年に、公民権法、いわゆる黒人差別撤廃法の制定に繋がっていきました。だから、MLBがあの時にジャッキー・ロンビンを雇っていなかったら、アメリカ社会で黒人差別撤廃法が誕生していたかどうか疑問だと思います。
それでは、今日の本題に入らせて頂きます。
先ほど申し上げましたように、ダルビッシュの加入に、ポスティングシステムと言われていますが、1億ドルを超える非常に高額の年俸をテキサスレインジャーズが支払いました。一体、MLBはどうしてそんなに高額の年俸が支払えるのかということについてお話させて頂きます。
まず、最初に、参考になるデータを紹介します。次に、一番のポイントであります高額年俸を可能にするいわゆるアメリカのスポーツのビジネスモデル、日本とは全く違うモデルですが、これについて説明します。そして、ビジネスモデルの中核をなすコミッショナー機構が如何に権力をもっているかということを具体的な例で皆さんにご紹介いたします。
皆様の中には、会社の経営に携わっておられる方も沢山いらっしゃると伺っていますが、何か参考にして頂けるような点があれば望外の喜びです。
それでは、最初に、一体、MLBの選手はどれくらいの年俸を貰っているのかということで、MLB機構の総収入額(儲け)の推移を紹介します。特徴的なのは、現在のMLBの儲けは、1995年、今から15~16年前に比べて、約5倍になっているということです。日本のプロ野球は、その間、全く横這いです。増えもしていないし、減りもしていない。その日本の水準は、1995年のMLBの13億ドルを80円/ドル換算した金額です。
2番目として、どの程度、選手の年俸に開きがあるのかということをイチローのケースで説明します。イチローは21年間、日本で9年アメリカで12年、プレーしました。この21年間の稼ぎを、もしも日本でズーッとプレーし続けていた場合と、実際に12年間アメリカでプレーして貰った金額との差がどれくらいかを試算してみました。アメリカでプレーした方が約80億円の収入増になっています。こういう規模の話をしているということです。日本でプレーし続けたとした場合の12年間の年俸は日本のプロ野球の最高年俸(6億円の水準)を仮定しました。
いよいよ本題の「高額年俸を可能にするビジネスモデル」です。これには、いろいろ要因はあります。一つは、一部の金満球団(ヤンキース、レッドスックスなど)が吊り上げているというもの。二つ目は、サラリーキャップ(球団ごとに年俸総額を抑える、それ以上は突出しない)が適用されないということ。アメリカの4大スポーツで、MLBを除いた、フットボール、バスケットボール、ホッケー、これらでは全てサラリーキャップ制度を採用しています。1995年に、野茂がデビューした時、MLB側はこのサラリーキャップを適用しようとして、選手会に図りました。しかし、選手会は「NO」という事で、最終的にはストライキに発展して、200日以上ストライキが続いたという有名な事件がありました。どうしても選手会が強くて、MLBでは未だサラリーキャップが誕生していません。
これらが年俸を押し上げる直接的要因と言えますが、基本的には、その高収益性を支えるMLBの経営構造、経営手法にあると思っています。この経営の土台をつくったのは、1984年のロスアンジェルスオリンピックを成功に導いたピーター・ユベロスです。オリンピックを商業化し儲かるイベントにした敏腕の人物です。彼がMLBのコミッショナーとなって色々な抜本的な改革をして現在の高収益性を支える土台をつくりました。
具体的にどういうことかといいますと、まず構造です。コミッショナーへの権限の集中です。これを、徳川幕府に例えてみます。MLB機構(日本でいうコミッショナー機構)が徳川幕府、コミッショナーは将軍、各球団(オーナー)は大名ということです。MLB機構と各球団は主従の関係になります。日本とはえらい違いです。基本的構図としては、各球団はベースボールの発展に尽くすことを誓約する見返りに、フランチャイズ(特定地域での独占的興業権)を与えられる。いわば、幕府に対する忠誠心を誓わせる見返りに幕府が領地を与える構図だと理解して頂いて間違いないと思います。この構図については、後でMLB機構の力量というところで具体例を紹介します。
次に、経営手法です。すなわち、商品価値を高める、スポーツの場合は試合を白熱化させるということです。貪欲なまでの利益追求を可能にする社会主義的経営手法が本当に浸透しているということです。社会主義的経営手法とは、稼ぎの5~6割がMLB機構に全部プールされ、後日に必要経費を差し引いて各球団にフィードバックされるというシステムです。徹底的に各球団の財政事情の格差を小さくするということに意を払っているのです。
では、どういう力があるのか、具体的に発生した3つの事例でMLB機構の力量、能力というものをお話します。まず、MLB機構自体には、非常に資金力があり、独自に球団を保有できるほどで、球団の一時的なオーナーになる資金力をもっているということです。この具体例としては、モントリオール・エキスポスのことがあります。オーナーが球団を放出するとしましたが、買い手がなかなか見つからず、とりあえずMLB機構が買い取り4年間オーナーとなりました。4年後にワシントン・ナショナルズとして売却しました。その時の売却額が 4.5億ドル。モントリオール・エキスポスから買い取った額は1.5億ドル。3億ドル儲かっている。これも資金力がなせる賜物であったと思います。
2つ目は、WBC(ワールド・ベースボール・クラッシク)にみる企画力・実行力です。WBCは、2006年から始まりまして、来年2013年に第3回目が行われます。国際部門担当シニアVPポール・アーチーと、現在日本駐在MDジム・スモールの二人が、2001年ごろから、野球の世界大会やってみようじゃないかということで、企画を始めました。そこで非常に苦労したのは、キューバの参加です。アメリカはキューバと経済断交しており、キューバの選手がアメリカ本土で野球をして報酬を貰うという経済行為は絶対できないとして、アメリカ政府はキューバの参加はまかりならんとしていました。そこで、カリブ海の盟主であるキューバが参加しないことにはWBCとして片手落ちになると、徹底的に粘り腰で交渉してやっとアメリカ政府を説得しキューバの参加が認められました。ベースボールの世界は我々が牛耳っているという強烈な自意識があるということです。来年のWBCは12か国増えて、28か国で実施されます。タイ、フィリピン、イギリス、フランスも新たに参加します。
3つ目が、名門ドジャース破綻による波紋を最小限に抑えた指導力、統率力です。近年のドジャースの経営状況は、共同オーナーであるマッコート夫妻の離婚問題というお家騒動も絡み、泥沼化していました。MLB機構は忠誠心に疑いありとして、昨年4月ドジャースを実質管理下に置き、経営権をはく奪し、領地召し上げを断行しました。これに対してオーナーはあくまで自主再建にこだわり、MLB機構と全面対決姿勢を打ち出し、6月に破産法の申請を行いました。その後、数か月の話し合いの結果、11月ついに球団売却で合意をみました。 11グループが名乗りを上げていますが、4~5月には決まるようです。ご清聴どうもありがとう御座いました。
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