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卓話:「高校野球100年」

「 高校野球100年」    選抜高校野球大会選考委員 鬼嶋一司 様
ただいまご紹介頂きました、選抜高校野球大会選考委員 鬼嶋です。この横須賀ロータリークラブという伝統あるクラブでこういう機会を2015-10-09.png頂きましたことは大変光栄に思います。今日は『高校野球100年』ということでお話をしたいと思っております。元々全国中等選手権大会という名称だったんですが、1915年に始まりまして、途中第二次大戦で中断されて第97回になっていますが今年でちょうど100年だった訳です。お陰様で今年の大会は100年記念ということもあって、大変な盛り上がりでした。後日NHKのプロデューサーから平均視聴率が10%を超えたということで、放送総局長の特賞を受賞したほどでした。特に今年は神奈川県の東海大相模が優勝しましたので、県民の私も喜んだわけです。今年の東海大相模は予選からダントツの強さで制覇したという感じでした。
去年の夏も東海大相模は出場しましたが、一回戦で敗退しました。一回戦の相手は盛岡大付属との試合だったのですが、投手は横浜出身の松本選手でして、大会屈指の好投手と言われていましたが、肩を壊していて120キロくらいの緩いボールしか投げられない状況でした。その日球場で東海大相模が初優勝した時のキャプテンの井尻さんに『今日の試合が一番大変ですね。』といったのですが、東海大相模が負けるときは一回戦で負ける時が多いんですね。負けるパターンとしては最初先制していても、機動力に溺れて、止められると慌てて何でもないボールを振ったりして自滅していくんですね。
それが今年の東海大相模は、県大会でも横浜高校との決勝戦で、送るべきところは送って点を取って攻撃にメリハリがついてチームは変わったなと思いました。
それと今年は注目の早稲田実業が、清宮選手の活躍で準決勝までいきました。甲子園球場はチケット販売の開始が6時半ですが、阪神梅田からの電車は超満員で甲子園を降りるとすでに球場から長蛇の列で、販売開始後10分で売り切れてしまいます。その後炎天下の下入れるまで延々と並んでいるんです。関係者としては大変有難いことですが、『いらち』の関西人の方がこれだけ待つということは大変印象深いです。
甲子園の大会が終わって日本でU-18の世界選手権がありました。日本は決勝戦でアメリカに一点差で負けました。この試合は日本が圧倒的な形で押していましたが、日本のミスで自滅したというように思います。翌日の新聞に『世界で勝つためには甲子園をどう位置付けるか』というコラムがありました。この点について私は非常に難しい議論だと思いました。日本の甲子園はスポーツという側面だけでなく、日本の文化という面があると思います。お手元の神奈川新聞の記事は、2年前に日本の『野球』とアメリカの『ベースボール』の違いについて私が書いたものです。この年に準優勝した済美高校の安楽投手が一回戦からトータルで772球もの投球をしたことについて、アメリカの野球専門誌が『正気の沙汰ではない球数』と報道したことが発端になり、ダルビッシュ投手をはじめ一部の識者からも『無茶苦茶で危険な起用法』との批判がでました。これらの意見に対して国内では、元プロ野球選手の江本孟紀氏が『全く余計なこと、大きなお世話』と一蹴しました。確かにアメリカの『ベースボール』から見れば異常な投球数であろうかと思いますし、医学的にも許されない投球数であろうと思います。
アメリカの『ベースボール』の発祥は1860年代にプロのチームが各地方にできて成立ってきたまさにプロの歴史、興業の歴史です。勝ち負けだけではなく、個人の成績や見せる要素が入ってきますし、ビジネスですからお金ももらいます。そういう歴史のベースボールです。それに対して日本の『野球』は1871年に来日したホーレス・ウィルソンが当時の東京開成、現在の東京大学で教え、1888年の慶應の野球部、1901年の早大野球部創部につながり、1915年に全国中等選手権が始まっています。日本の野球創成期の歴史はそのまま大学野球の歴史です。その後正力松太郎さんの手によって1934年に大日本野球倶楽部、現巨人軍が結成されます。初代監督は三宅大輔・初代慶大野球部監督が就き、日本のプロ野球が始まります。
さらに飛田穂洲先生・早大初代監督が唱えた、『一球入魂』または『グランドは道場である』のように野球は教育の一環という視点・風土が日本の野球、特に学生野球では脈々と生き続けています。
こういったように日本の『野球』とアメリカの『ベースボール』とは全く異なるスポーツだと私は理解すべきだと思っています。そういう中でやはり戦う訳ですから勝つということは重要ですが、それ以上に高校野球はプロセスが大事だと思います。NHKのアナウンサーの山本浩さんは『選手達は3年に一度あるかないかの舞台で生死を賭けたような戦いを繰り広げている。そんな球児たちをプロだと思う。見返りも求めず野球にすべてを捧げている。野球には忍耐・努力・勤勉・自己犠牲・礼が求められる。相撲も同じであり、これらがないと日本の勝負事は成立しない。まさに日本の原点である。』と言っています。
今年の甲子園の開幕戦の始球式は王貞治さんで、すごいと思いました。それに第一回大会で出場した十校(秋田中学、早稲田実業、宮城四中、京都二中、神戸二中、和歌山中学、広島中学、鳥取中学、久留米商業)のチームが昔のユニホームを着て選手が出場しました。開幕では15年ぶりに出場した京都二中、今の鳥羽高校キャプテンが選手宣誓を行うといったすごいシチュエーションでした。今年の早実の前評判はそれほど高くありませんでした。一回戦は今治西、二回戦は広島新庄、三回戦は東海大甲府、準々決勝では九州国際大付属と対戦しました。インターネットでは審判のストライクゾーンの判定について、早実に明らかに有利だとの批判が出ました。しかしその次の試合などトータルを見て絶対にそれはないと確信しました。
今日はこれから富山に行って選抜高校野球の選考委員として、私の担当地区の北信越大会の試合を見に行きます。選考はなかなか辛いところがありまして、選抜大会というぐらいですから、選手権ではないんです。これから始まる中央大会は参考のデータにはなりますが選考委員が出場校を決めます。
2009年の選抜では東北大会の準決勝で現在西武ライオンズの菊池雄星がいた花巻東が青森の光星学園に敗れました。決勝戦は光星学園が一関学院に勝っていますが、この二位の一関学院を引き吊り下して、花巻東を選んだんです。本大会では結果的に花巻東が決勝まで行ったんです。
2009年秋の大会で日大三校は東京予選の準決勝で帝京高校に敗れています。帝京と東海大菅生と決勝でした。選考委員がこの二位校ではなく日大三校を持って行ったんです。本大会では沖縄興南と争って延長戦で負けてしまいましたが準優勝しました。
私は見るスポーツとしてはラグビーが大好きで、先日のワールドカップで日本が南アに勝ったのは大変な快挙だと思います。ラグビーというスポーツは力と力が激突して、体力で決まってしまいます。意外性が少ないスポーツですね。陸上競技もだいたいそうですね。野球はそうではなく偶然性のスポーツです。ヤクルトの優勝が偶然ではありませんが・・。
去年の石川県の決勝は小松大谷高校が8点差で星陵高校をリードしていたんですが、最終回に逆転したんですね。負けた小松大谷高校の一年生エースをTBSがその後一年間ずっと取材を続けていたんです。ところが今年の石川県の準々決勝で星陵高校がリードしていたんですが、3点差を小松大谷高校が今度はサヨナラでミラクル逆転をしました。よくもこんなボツになるかもしれないテープを取り続けたと思って感激しました。
来年の選抜は3月20日からですが、この秋の大会で横浜高校はかなり強いと私は思っています。今年の選抜は30数年ぶりに神奈川県から出場がなかったんですが、このまま関東大会を横浜高校が勝ち進めば、来年の春はこのチームがやってくれると非常に期待しています。是非機会があれば高校野球を見て頂ければと、またご指摘を頂ければと思います。ご静聴どうもありがとうございました。
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